一般論との違い

メディア分科会の茂木です。東京セッションも後半に差し掛かり、議論も私たちの目標に直接的に関わる内容となってきました。

私たちメディア分科会の目標は「メディアを通じて日中関係を変える」ことであり、北京セッションではメディア一般を扱いました。東京セッションでは、日中関係という文脈におけるメディアに焦点を当て、参加者個人とメディアとの関係、メディアが果たすべき役割、メディアを通して私たちにできること、を中心に話し合っています。

興味深かった議論の一例として、日中関係という文脈においてメディアが果たすべき役割について話し合う際に用いたケーススタディが挙げられます。「A国のマスメディアがB国との領土問題に関してA国に不利な情報を得たとし、そのような状況において、A国のマスメディアは国益を害さないように情報の取捨選択をするべきか、それともあらゆる情報を受け手に提示するべきか」という問いから出発しました。国益の捉え方などメディアというトピックから逸れた話にも議論が飛びましたが、最終的に「メディアは外交問題一般に関する報道において、国益を優先すべきか、それとも真実を伝えることを優先すべきか」という問いに対する答えを考えました。北京セッションにおいて、メディアの役割として「真実を伝える」ことを程度に差はありつつも全員が求めていたのに対し、今回の議論では「国益を優先すべき」と主張する参加者が北京大側は全員、東大側においても多数であり、一般論と国益に関わる議論とにおいて相反する考えを持っていることが明らかになりました。その中でも、北京大側が政府規制を支持する傾向がある一方で、東大側はメディアの自主規制に期待する傾向があるという違いが見られました。一般論においても国益においてもある程度の政府規制を支持する北京側に対し、国益に関わる議論では一般論と異なる意見を提示した東大側の一人として、私はメディアに求める機能についてジレンマを強く感じました。政府規制一般について話していた時より国益に関わる議論の時の方が、北京大生が政府規制を支持する理由を深く理解できた気がします。これらの議論を通して、日中関係に関する報道においてメディアに期待する役割を深く考える機会となりました。

北京・東京両セッションの集大成として、メディア分科会の最終目標である「日中関係の改善のためにメディアを通して私たちにできること」を話し合い始めました。約2週間の議論を通して私たち参加者が経験した発見や変化を、私たちのみに留めずに周囲に広め、互いの国に対するイメージを考え直す機会を設けることを目的としています。私たち学生でも簡単に発信者となることができるソーシャルメディアを活用し、効果的な記事を投稿できるよう、自分自身の発見を振り返りつつ、今までの議論で考えたソーシャルメディアに期待する役割なども意識して議論を続けていきたいと思います。